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(2005年11月18日訂補 化学オリンピックWG)
付則A
A 1:実験における安全規則(生徒用)
生徒は有害な物質を完全に実験室から取り除くことは不可能であるということを認識しなければならない。化学者はすべての物質を適切な方法で取り扱うことを学ばねばならない。国際化学オリンピックに出場するすべての生徒が,全部の化学物質の有害な性質を完全に理解しているとは望まないが,大会の組織委員会では,すべての生徒たちが基本的な安全に関する実験操作法をこころえているものと考えている。たとえば,生徒たちは実験室で飲食,喫煙をすることや化学薬品を口にすることが厳禁であることくらいは知っているものと考えている。
過去に教えられてきた安全に関する常識的なことに加え,生徒たちは以下に示すようないくつかの特別な規則をオリンピックに際して守らなければならない。実験問題を実施している間に安全に関する質問がある場合には,近くにいる監督者に対処方法を遠慮なく質問することを望む。
自身の身を守るための安全規則
- 実験室内では常に防護メガネを着用しなければならない。コンタクトレンズを装着している生徒はゴーグル(完全に目を覆う)を着用しなければならない。安全メガネは開催国が用意する。
- 実験着を着用しなければならない。生徒は自分で用意すること。
- 安全のため,長ズボンと甲を覆う靴の着用を推奨する。長髪やルーズな服装は厳禁。
- ピペットを口で吸ってはならない。ピペット吸引用の道具を使用しなければならない。
化学物質の取り扱い規則
- 有害物質取り扱いのための特別な指針は実験問題の操作手順のところに書かれている。すべての危険を有する可能性がある物質は,下に示すような国際標準マークのラベルが貼られている。生徒はこれらのマークが何を表わし,どのような意味かを理解していなければならない。(付録Bを見ること)
- 薬品を流しに捨ててはならない。開催国により指示された廃棄ルールに従うこと。
A 2: 国際化学オリンピック開催国に対しての安全規則と推奨事項
IChO に参加する生徒のすべては安全に関する最低限の知識は備えていると考えてもよいだろう。しかし,生徒の安全について注意を最大の注意をはらうことは国際判定委員会および開催国の責務である。生徒の実験室内での安全に関する注意事項を示すことにより,自分自身の安全は自身の責任であることを喚起するものとする。安全に関する注意事項は実験問題の内容により毎年異なる。それゆえ,開催国の実験問題作成者は下に示すような規則を別個に定める責任がある。組織委員会は実験問題の実施に先立ち実験の安全性を十分に確認しなければならない。これらの予備実験はIChO
出場者と同程度のレベルの生徒により実際におこなってみた方がよいだろう。
開催国に対する規則( A 1も参照のこと):
- 実験問題実施中は応急処置ができるような用意をしておかねばならない。
- 有害物質を取り扱うための適切な方法を生徒に知らせなければならない。
- それぞれの有害物質をとりあつかうための特別な手法は実験問題の冊子に書き示しておくべきである。
- 有害物質の入った瓶(コンテナ)にはすべて,国際標準マークの適切なラベルを貼らなければならない。(付録B1)
- 化学物質の廃棄方法を実験問題冊子の中に記述して生徒に知らせるべきである。環境に対して危険であると考えられる化学物質には廃棄物収集用のコンテナを利用すべきである。
- 実験問題はできるだけ少量の物質を用いて実施するように作成すべきである。
- 実験室の設備は,以下の項目を考慮して選定すべきである。
- 生徒に実験をするための適度なスペースを確保するだけでなく,他の生徒との安全な距離も確保てあること
- 実験室は適切に換気がされ,必要ならば十分な数のドラフトを備えていること
- 各部屋には一つ以上の非常口があること
- 消火器がすぐ近くに設置してあること
- 電源が適切な場所の設置してあり,安全に配慮されていること
- こぼした物質をふき取るための適切な装置を配置していること
- 安全の確保のために4人の生徒に対して1名の監督者を確保できていることが望ましい。
- IChO では組織委員会は毒物,有害物質,変異原性物質使用のための国際的ガイドラインを遵守すべきである。
付則B
B 1: 災害警告マークと説明(校内の化学薬品に適用されるもの)
1. 爆発性の物質 (E)
これらは火気に投入することにより爆発を起こす可能性のある物質,または,ピクリン酸,有機過酸化物,1,3-ジニトロベンゼンよりも衝撃や摩擦に対して敏感な物質である。特に,これらにはR指定されるもの,R1-3(B2参照)。
これらの物質を使用したり保管したりする際には,S項目の安全指針を守らねばならない。(S15-17,
B2 参照)
2. 発火性物質,酸化性物質 (O)
これらは,特に可燃性の物質や有機化酸化物などの他の物質と接触した際に大きな発熱反応を起こす物質を指す。(R7
から9 の物質を含む)
3. 可燃性物質 (F +, F)
液体状態において高可燃性物質とは引火点が0 ℃以下,沸点が35 ℃を超えないものを指す。これらはF+で示し,R12に指定される。
以下の条件に当てはまる物質が可燃性物質である。
- エネルギーの供給なしに通常の気温下で温度上昇し発火するもの
- 固体状態において,短時間炎と接触するだけで容易に発火し,炎を取り去っても燃え続けるもの
- 液体状態において,21 °C 以下で発火するもの
- 気体状態において,101.3キロパスカル,20℃で空気と混合すると発火するもの
- 水または湿った空気に接触したときに,大量の可燃性ガスを発生するもの
- 塵状の状態で空気と接触すると発火するもの
これらの物質は,Fで示しR11に指定される。
可燃性物質は21-55℃の発火点を示し,R10に指定されるが,特別な危険性を示す記号はない。
これらの可燃性物質の加熱をおこなう際には,電気火花が出ないように保護された加熱装置でそれ自身が可燃性材料でできていないものをのみを用いる。
すべての物質を加熱する際,加熱により危険な気体が大気中に漏れないようにしておこなわねばならない。
ただし、火災のデモンストレーション用として少量の可燃性危険物質を扱う場合には除外される。
これらの操作をおこなうにおいては,国などにより定められた基準に(消防法など)を遵守しなければならない。
4. 毒性物質(T +, T, Xn )
化学物質は法律により3種類の毒性物質に分類されている。
- 猛毒物質(R 26 - R 28), 記号 T+,
- 毒性物質 (R 23 - R 25), 記号 T,
- 低毒性物質(R 20 - R 22), 記号 Xn
猛毒性の物質には、たとえ少量であっても吸い込んだり、飲み込んだり、または皮膚から吸収された場合、
即座に重大で急激な、または慢性の健康障害を引き起こしたり、死亡する場合のある物質が該当する。
毒性物質には、少量を吸入したり、飲み込んだり、皮膚から吸収された場合に、重大な急性または慢性の健康障害を起こしたり、
死亡する可能性が場合のある物質が該当する。
低毒性物質(有害物質)には吸入したり、飲み込んだり、または皮膚から吸収された場合に重大な健康障害を引き起こしたり死亡する場合のある物質が該当する。
もし実験操作中に大変毒性の強い物質並びに毒性物質(たとえば塩素や硫化水素)が発生する場合、それらの使用量は実験に必要最低限に留めておくべきだろう。
揮発性使用の際には、実験をガス排気装置のついたドラフト内で行わなくてはならない。
残留物質は実験終了後適切に処理し、決して残留してはならない。廃棄物を処理することができない場合には実験をおこなうべきではない。
低毒性物質は許可なく取得または調整してもよい。猛毒性物質および毒性物質が、法律で定められ有害物質とされる最大濃度を超えない範囲で含む場合も低毒性物質とする。したがって濃度1%未満の塩素水や臭素水、硫化水素水などは使用法に従って用いてもよい。
5. 腐食性物質 と刺激性物質 (C, X i )
苛性または腐食性の物質 (R 34, R 35) はC指定とし,生体に作用した場合に破壊するもの示す。また肌や粘膜に直接,長時間または繰り返しふれた時に、腐食までは起こさないが炎症をおこす場合、これらの物質をXi指定とし,刺激性物質(R
36 R 38)に分類する。関連する安全基準(S 22 - S 28)を遵守しなくてはならない。
6. 発ガン性、遺伝子や胎児への損傷、慢性的障害をもたらす有害物質
発ガン性のある(R45)、遺伝への損傷をもたらす(R46)、胎児への損傷をもたらす(R47)、または慢性的な障害をもたらす(R48)事が認定された物質は、教育用に使用してはならない。このような物質はすべての学校の薬品庫から取り除かなくてはならず,どのような条件においても学校に保存しておくことは許されない。
さらに発ガン性の可能性がかなりあると疑われている物質(R40)については、対応する予防策がきちんと採られており、さらに他の危険性が少ない化学物質では代用できない場合にのみ使用できるものとする。
B 2: Rフレーズ,Sフレーズに関する表
特記する危険物質の性質 (R)
- R 1 乾燥すると爆発するもの
- R 2 衝撃,摩擦,火気そのたの発火源により爆発する危険があるもの
- R 3 上記の条件で特に爆発の危険性が大きいもの
- R 4 非常に高感度で爆発性の金属化合物を生成するもの
- R 5 加熱により爆発の可能性があるもの
- R 6 空気に接触して爆発するもの,または非接触でも爆発するもの
- R 7 火がでるかもしれないもの
- R 8 燃えやすい材料と接触すると火が出る可能性があるもの
- R 9 燃えやすい材料と接触すると爆発するもの
- R 10 可燃性
- R 11 高い可燃性
- R 12 特に高い可燃性
- R 13 特に高い可燃性の液化ガス
- R 14 水と激しく反応するもの
- R 15 水と接触すると高い可燃性ガスを発生するもの
- R 16 酸化性の物質と混合すると爆発するもの
- R 17 空気中では瞬時に燃焼するもの
- R 18 使用中に可燃性/爆発性の混合空気を発生する可能性があるもの
- R 19 爆発性の過酸化物を生成する可能性のあるものR 20吸入すると有害なもの
- R 21 皮膚に接触すると有害なもの
- R 22 飲み込むと有害なもの
- R 23 吸入すると毒性のもの
- R 24 皮膚に接触すると毒性のもの
- R 25 飲み込むと毒性のもの
- R 26 吸入すると猛毒性のもの
- R 27 皮膚に接触すると猛毒性のもの
- R 28 飲み込むと猛毒性のもの
- R 29 水と接触して毒性のガスを発生するもの
- R 30 使用中に高可燃性になるもの
- R 31 酸と接触して毒性のガスを発生するもの
- R 32 酸と接触して猛毒性のガスを発生するもの
- R 33 くりかえし蓄積すると危険なもの
- R 34 燃焼するもの
- R 35 激しく燃焼するもの
- R 36 目に刺激性のもの
- R 37 呼吸器系に刺激性のもの
- R 38 皮膚に刺激性のもの
- R 39 非可逆的に危険なもの
- R 40 非可逆的に危険となる可能性があるもの
- R 41 目に重大なダメージを与える危険のあるもの
- R 42 吸入により過敏性なもの
- R 43 皮膚に接触することにより過敏性なもの
- R 44 閉鎖系で加熱すると爆発の危険があるもの
- R 45 発がん性のもの
- R 46 遺伝子の損傷を起こす可能性のあるもの
- R 47 胎児に影響を与える可能性のあるもの
- R 48 慢性な毒性の危険があるもの
安全に対する推奨事項 (S)
- S 1 施錠して保管
- S 2 子供の手のとどかないところに保管
- S 3 冷所に保管
- S 4 居住空間から離れたところに保管
- S 5 製造者が指定した方法により保管しなければならない液体
- S 6 製造者が指定した方法により保管しなければならない不活性ガス
- S 7 容器を厳重に密閉し保管しなければならない
- S 8 容器を乾燥状態で保管しなければならない
- S 9 容器を換気の良い場所に保管しなければならない
- S 10 容器を湿潤状態で保管しなければならない
- S 11 空気との接触を避ける
- S 12 容器を密閉して保管してはならない
- S 13 食品、飲料、動物用のエサからは離して保管
- S 14 製造者が指定した物質とは離して保管
- S 15 熱源から離れたところに保管
- S 16 発火源から離れたところに保管(禁煙)
- S 17 可燃性物質と離して保管
- S 18 取り扱いおよび容器を開ける際には注意
- S 20 使用中は飲食厳禁
- S 21 使用中は禁煙
- S 22 ダストの吸入に注意
- S 23 気体などの吸入に注意
- S 24 皮膚との接触を避ける
- S 25 目にはいらないようにする
- S 26 目に入った場合は大量の水で即座に洗い流し医師の指示をうけること
- S 27 汚染された衣服は即座に脱ぎ去ること
- S 28 皮膚と接触したら大量の製造者が指定した物質を用いて即座に洗浄すること
- S 29 排水路中の水を乾燥させてはならない
- S 30 この物質に水を加えてはならない
- S 31 爆発性の物質とは離して保管すること
- S 33 静電気の発生に防止に留意
- S 34 衝撃や摩擦を避けること
- S 35 この物質と容器は安全な方法で廃棄しなければならないS 36適切な保護着を着用のこと
- S 37 適切な手袋を着用の事
- S 38 換気が不十分の場合には防毒マスクを着用のこと
- S 39 保護めがねを使用の事(保護面)
- S 40 床や当該の物質で汚染されたものすべてを清掃するには、製造者が指定したものを使用すること
- S 41 火災や爆発の際には、発生する気体を吸入しないこと
- S 42 ガスが発生している際には防毒マスクを着用のこと
- S 43 火災が発生した際には、指定された消化器の種類を選んで使用する事(水をかけると危険が増す場合には、絶対に水を使用してはならない)
- S 44 気分が悪くなった場合には医師の指示を受けること(その際、原因になったものと思われる物質のラベルを見せる
- S 45 事故が発生したり気分が悪くなった場合には医師の指示を受けること(その際、原因になったものと思われる物質のラベルを見せる
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