国際化学オリンピックは真に化学の実力を問うものであり,語学力の差などでハンディが生じないように
各国の母国語に問題を翻訳して実施する。翻訳は,同行した指導教員(Mentor)がおこなう。
問題の漏洩を防止するために,生徒と教員とは開会式の終了と同時に別行動になる。今大会では,7月6日(土)の午前中に開会式が終わると,フロニンゲン大学化学教室の実験問題会場を視察の後,フロニンゲンをはなれ,バスで隣のフリースランド州まで移動した。実験問題(7月8日,月曜日),理論問題(7月10日,水曜日)が終了し,各国による自己採点が完了する7月11日(木曜日)までの5日間を,湖に囲まれた田舎町,Ernewoude
のリゾート地 It Wiid で過ごす。フロニンゲン市からは,バスで約1時間半,100
kmほど離れている。外部との通信ができなくするために,インターネットなどは一切使用できない。また,理論問題が終了して採点にとりかかるまでは携帯電話も組織委員会にあずけなければならない。
まず,実験問題の英語版が,到着日の夕方,午後4時半に各国に配布される。カウンターで組織委員長の Jan Apotheker 教授が各国の Mentor に直接手渡す。各国は,即座に問題の検討にとりかかる。夕食後に,問題内容に関するミーティング (Jury Meeting) がとり行われるが,それまでに委員会に異議等を申し入れる。 委員会はミーティングまでに改定案を用意し,その内容がミーティングにおいて慎重に検討される。最後には,参加国それぞれが一票の権利をもつ投票(オブザーバーには投票権がない)において多数決される。
カウンターに座り,問題を配布する Jan Apotheker 組織委員長(左),日本もサインをして受け取る(右)。
ミーティングが終了すると,翻訳作業のためにコンピュータールームの使用が解禁される。約60台のコンピュータが用意され,これらはイントラネットによりネットワーク化されている。参加国それぞれの使用言語でコンピュータシステムが利用できるように用意されていて,設定をおこなえばどのマシンからログインしても同じ環境で利用できるようになっている。まもなく,実験問題の公式最終版がコンピュータネットワーク上に,MicrosoftWordのファイルで配布される。各国は,このファイルをもとに翻訳作業を開始する。
コンピュータシステムに関して特別な要望がある場合には,参加申し込み(IChO34
では2月1日が申し込み期限)の際に要求しておけば,可能な限り対応してもらえる。(持ち込みノートパソコンとの接続や,特殊なメディアの使用など)。われわれも,ノートパソコンを持ち込みコンピュータルーム閉鎖後には部屋に戻って作業を行なおうと考えたが,データ転送のためのメディアがフロッピーディスクのみであり,大きなファイルの転送に苦労した。(実験問題が約1.5M,理論問題は約8Mと大きいので,大きな絵や図を消してサイズを小さくして持ち帰った。)
コンピュータルームの閉鎖後や混みあう時は
バンガローに戻り持参のノートパソコンで...
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コンピュータの争奪戦は厳しい。60台用意されているはずなので,各国に一台いき渡るはずだが,一国で何台もキープする国があるためか。 日本が使っていると,オブザーバで本番じゃないんだからと,ブラジルに譲らされてしまった。 |
リトアニアの翻訳はさらに複雑。生徒により使う言語が違うのでロシア語,リトアニア語と二つも翻訳しなければならない。 |
その他
英語のキーボードを打っているのに,画面に日本語が打ち出されるのが不思議でならないらしい。ニュージーランドのメンターに,「どうして日本語が出てくるのか?」と訊かれた。日本語の文字はすべて母音と子音の組み合わせで出来ているから,すべてをアルファベット2つの組み合わせで表現できるんだと説明してやったが,わかってもらえたのかどうか...
ベルギーのメンターに日本語訳版を一部くれと言われたのであげた。まさか読めるとは思えないので,たんなる収集趣味か?